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Vol.001 「人を信じる」

「人を信じる真心は人の心を動かす」

〈松陰語録〉
 「人を信じることは、人を疑うより、はるかに勝っている。
 ゆえに、人を信じすぎる欠点があったとしても、人を疑いすぎる欠点は
 絶対にないようにしたい。」

 人を信じすぎる。これは松陰の性格の一大特徴で、そのためしばしば失敗もしたが、
一生直らなかった。いや、松陰はこの性格を誇りとしていたのに違いなく、
直そうとしなかったと言ったほうが当たっているだろう。
人を信じる。確かに大事なことであるが、必ずしも相手が信じるに足る人とも限らないし、
信じたら信じ返してくれるという保証もない。
ところが、松陰は、人を信じすぎるのである。そのために失敗を繰り返したが、
下田で起こした密航事件もその「すぎる」が、まざまざとあらわれた例だ。

 普通の人なら、こともあろうに、敵対するような形でやってきた黒船を、
密航の手段に使おうなどとは考えもしないだろう。疑われるのがおちだ。
下手をすると殺されるかもしれない。そう危倶するのが常識というものだろう。

 事実、ペリーは疑った。松陰が密航する真意をはかり兼ね、幕府の回し者の、
なにか其のある行為ではないかと曲解して、拒絶した。しかし、松陰のほうは、
相手が異人であろうが、言葉が違おうが、誠意は必ず通じるものと信じている。
だからこそ、こそこそと隠れて乗り込むのではなく、堂々と名乗って、
海外渡航の便宜を与えてくれるよう依頼した。

結果は大失敗で、牢獄の人となる。
この密航事件は、行為そのものは失敗であったが、決して無駄な失敗ではなかった。
心ある者に深い影響を与えて、はるかな海外に目を向ける者、行動の意義を
理解する者が次々にあらわれ、幕末を変革に向けて動かし始めるのだった。

 また、ペリーも松陰が囚人になったことを知ると、その行為が純粋だったことに感動し、
幕府要路へ、罪を許すように訴えた。

その後、松陰が獄中で述べたのが、次の言葉である。

「知を好む者は多くは人を疑うに失す。
 仁を好む者は多くは人を信じるに失す。
 しかれども人を信ずる者は、その功をなすこと、
 往々人を疑う者に勝ることあり。
 故に余は、むしろ人を信じるに失するとも、
 誓って人を疑うに失することなからんことを欲す」

幕末の志士、情熱の人松陰は、人を疑い疑心するよりも、徹底的に人を信じ、
己のその心を信じたのである。



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